第116章

アリシアに、さほど未練はなかった。彼女が本当に欲しかったのは「塔そのもの」だ。

長いあいだ放置され、今にも崩れそうな外観ではある。だが屋敷の蔵書で読んだ記録によれば、建造当時に使われたのは最高級の資材ばかりで、数百年程度では完全に朽ちない種類のものだった。しかも塔には、大型の魔法陣がいくつも組み込まれ、防衛体系として機能するよう設計されている。

ただ、塔の主が亡くなって以降、管理する者がいなくなった。魔法陣に嵌め込まれていた魔晶のエネルギーが尽き、順に停止した結果、塔は荒れ放題になり――今では子どもでも気軽に入り込んで遊べるほどだ。

けれど、修繕して、魔法陣へ魔晶を補填し直せば。塔は息...

ログインして続きを読む